対空戦・TMD

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海上自衛隊のシステム艦第1号



  「たちかぜ」 と 「あさかぜ」 
  アナログからディジタルへ
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  WES 導入の本質
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 WES (Weapon Entry System) とは


前述の通り、「たちかぜ」 型に搭載した WES は 「あまつかぜ」 に搭載した古いリレー方式のアナログ計算機を使用した WDS を、米海軍が 「たちかぜ」 型のために NTDS の技術を応用して開発したデジタル・コンピューター・システムで置き換えるものでした。


(注) : 正確にいうとシステム・デザインは先のとおり米海軍と言うよりその下請けの RCA 社です。


( RCA 社作成の資料をもとにした概略の構成図)

そしてその WES ですが、メインは当時米海軍の NTDS で広く使われていた標準のデジタル・コンピューターである CP-642B が1台 (たった)、NTDS の汎用コンソール (操作卓) OJ-194 が6台を中心とするものでした。

(注) : 48DDG たる 「あさかぜ」 にはこれに更に司令部用として大型の OSC (Operation Summary Console) OJ-197 1台が追加され、また三次元レーダー用の HT/SZ (Height/Size) コンソールが汎用の OJ-194 に変更されました。


( RCA 社作成の資料をもとにした概略の構成図)


( 「たちかぜ」 型の CIC レイアウト 右が艦首方向 )

( 右が OJ-197 OSC、左の3台が OJ-194 米艦での写真より )

その CP-642B というコンピューターは、デジタルとは言ってもまだ 「コア・メモリ」 と呼ばれるものを使った30ビット、64Kワードのもので、計算能力だけを取り上げるならばそれこそファミコンにも及ばないものでした。


( CP-642B のキャビネット )

今から考えると、これたった1台でよくあれだけのシステムを動かしていたな、と (^_^;

したがってWES は、米海軍の NTDS 技術を応用したといってもその NTDS の簡易版でもなければ、ましてや CP-642B がたった1台のシステムですから、データ・リンクの Link-11 機能が入るような余地があるはずも無かったのです。


(注) : ネットや出版物などで、WES 導入時には Link-11 はまだ日本にリリースされなかったとしているものがありますが、これは誤りで、海自から要求もしていませんし、ましてや古い WDS の単なる置き換えでしかない WES について米側からの提案もあるわけがありません。 そもそもメインのコンピューターは CP-642B がたった1台のシステムなのですから。

その証拠に、ほぼ同時期であったといえる同じく米海軍が開発した 50・51DDH のシステム TDPS (Tactical Data Processing System、OYQ-3) は、米海軍の DD-963 スプルーアンス 級の CDS (最新の UYK-7 3台という大きなシステム) を参考にしたものですが、ターターや短 SAM を管制するわけでも無いのに CP-642B 2台となり、しかも当然の如くすんなりと Link-11 が導入されたのです。


そして捜索用レーダーによる目標の探知及び追尾は、 ADT (Air-target Detector & Tracker、対空目標探知追尾員) と SDT (Surface-target Detector & Tracker、水上目標探知追尾員) 各1名がそれぞれコンソールの PPI 上で、レーダー表示を見ながら目標の位置データを手動入力・更新していくもので、これを TK SUP (Track Supervisor) が監督する方式を採っています。


この手動入力方式そのものは、アナログ式の WDS で2台の TSTC (Target Selection and Tracking Console) で行っていたものとそれ程変わるわけではありません。


( WDS の TSTC とその目標データ入力要領 )

つまり、目標情報の精度はこの ADT と SDT の二人と、それを監督する TK SUP の技量にかかっていた訳ですが、それでもこれら全てを手動で行うには限界、特に目標数に、があることはお判りいただけるかと。

これは米海軍の当時の NTDS でも同じ方式で、このため空母などの大型艦のシステムでは倍の6名がそれぞれのコンソールで分担して行っていました。


( 当時の米空母における NTDS のコンソール例 )

しかしながら、既にお話ししたことのあるNWC (Naval Weapons Center、海軍武器研究所) での研究による結論でも示されたように、これでは 現代戦にはとても対応できない ことは明らかで、今後は 三次元レーダーも含む全ての捜索用レーダーは目標の自動探知・自動追尾とするべき であるとされました。

これにより、米海軍ではその対策の手始めとして、まず大型艦用の三次元レーダーである AN/SPS-48A の受信データをディジタル処理して、これによる 目標の自動探知・自動追尾を可能にした -48C を開発し、既存の -48A をこれと換装 することから始めたのです。







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最終更新 : 01/Mar/2020