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海上自衛隊のシステム艦第1号 |
「たちかぜ」 と 「あさかぜ」 |
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海上自衛隊は、当時米海軍の作戦部長であったアーレイ・バーク大将直々の配慮を受けて、第1次防衛力整備計画 (一次防、昭和33〜35年度) における部隊防空能力向上のために、ミサイル駆逐艦 「チャールス・F・アダムス」 (DDG-2 Charles F. Adams) 級をモデル・シップ (正確には後期型の DDG-15 Berkeley) として、米海軍が “3T” システムの最後として開発した最新鋭のターター・システムを搭載するミサイル護衛艦を昭和35年度予算で建造 (35DDG) することとなり、これが 「あまつかぜ」 (DDG-163) となりましました。
( 「あまつかぜ」 のモデル・シップとなった米海軍の 「チャールス・F・アダムス」 )
しかしながら、確かにターター・システムは、それまでに海上自衛隊が導入し得た第二次大戦の中古の様な装備に比べれば格段に素晴らしいものでしたが、その反面大変に高価でもあるため、米軍のモデル・シップに比して船体を小さくしたり (それでも当初案の 2600 トンではとても足りなくて急遽 3000 トンに増やしたのですが)、予定する兵装の一部を後日装備やスペックダウンするなどして建造予算を捻出せざるを得ませんでした。
( 公試運転中の 「あまつかぜ」 )
このため、当時の海上自衛隊の乏しい予算の中では国産艦艇の隻数確保が優先されたため、「あまつかぜ」 に続く2隻目のミサイル護衛艦の建造は後回しとされてきました。
その海上自衛隊が何とか次のミサイル護衛艦建造の予算を獲得できる目処がついたのは、「あまつかぜ」 から実に11年後の、第三次防衛力整備計画 (三次防、昭和42〜46年度) の最終年度の事となったのです。 これが 「たちかぜ」 型3隻 (当初計画) です。
そしてまず昭和46年度計画で1番艦 「たちかぜ」 (46DDG) の予算成立に伴い、ターター・システム一式を FMS (Foreign Military Sales、対外有償軍事援助) 契約により米海軍から購入しようとしたのですが、「あまつかぜ」 が手本とした 「チャールス・F・アダムス」 級の武器管制装置 (WDS Mk-4) はリレー式計算機を使用したアナログのシステムで既に旧式化していたため、米海軍でもこれの更新をどうするかを検討している最中でした。
( WDS Mk-4 の構成機器図、説明のためのもので実艦での配置は異なります )
( 実艦装備例 左から TSTC、WAC、WCP、DAC の各コンソール )
そこで米海軍がこの WDS Mk-4 の代わりのものを米海軍のシステム開発に関わっている RCA 社に検討させた結果、同社から提案のあったのが同社がシステム・デザインを手掛ける NTDS のハード及びソフト技術を応用したシステムでした。
この案は直ちに海上自衛隊の受け入れるところとなり (というより他の代案があるわけもなく、拒否する理由がないので)、米海軍の監督の下、プライム・コントラクターとしてシステム全体を RCA 社が、デジタル・コンピューターのソフトウェアをスペリー・ユニバック社 (Sperry-UNIVAC) が担当して開発が行われる事となりました。
( RCA 社作成の資料をもとに邦訳した WES の教育用資料の一つ )
そして米海軍のアドバイス (提案というより、強い要求) により、海自に納入後のソフトウェアの維持管理と教育訓練用を兼ねたテストサイトが横須賀船越のプログラム業務隊 (PGC) に作られることとなり、これの完成を待ってシステムの開発は米国から当該テストサイトに移されて継続されたのです。
このため、ソフトウェアの完成・引渡しまでの間、米側のエンジニアやプログラマー達がここに常駐して作業を行いました。
一方の海自側では、米国での開発が始まる前から海幕の CCS 幹事室で将来の情報システムについて研究を行なっていたメンバーを中心にしたチームを米国に送り込んで、米海軍の最新のシステムを研修させたのです。
このメンバーは WES の開発が始まるとこれの研究に取組み、次いで海自 PGC のテストサイトでの作業に移行すると、今度は領収後の自前の維持管理要員の育成を担当しました。
特に、プログラム2科長の大熊康之3佐 (当時) を長とするソフトウェア要員の教育訓練はその中心となり、これは後に海自内でも通称 「大熊学校」 として知れ渡ることになりました。
そして PGC のプログラム2科は、次第に海上自衛隊におけるデジタル・コンピュータを利用する艦艇戦闘情報処理システムについて研究・開発を担当するシンクタンク的存在となっていったのです。
最終更新 : 01/Mar/2020