対空戦・TMD

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海上自衛隊のシステム艦第1号



本記事は平成31年3月に、私のブログ 『桜と錨の気ままなブログ』 で前話の『1980年代の米海軍のPDMS』を書いたあと、これを機会にと思って5回連続でUPしたものです。 ブログでは時間が経つと後ろへ流れてしまいますので、改めてこちらに纏め直します。


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 「たちかぜ」 と 「あさかぜ」


一般に “国産初のシステム艦” と言われる 「はつゆき」 型ですが (実態は既にお話ししたように違うのですが)、その国産の前の “海上自衛隊初のシステム艦” と呼ばれるのが今はなき 「たちかぜ」 (DDG-168) であり、姉妹艦の 「あさかぜ」 (DDG-169) です。


( 公試運転における 「たちかぜ」 )

この 「たちかぜ」 型2隻が就役当初に装備したのが WES (Weapon Entry System) と名付けられた米海軍製のデジタル・コンピューター・システムでした。

この WES とはターター・ウェポン・システム (Tartar Weapon System)、あるいは単にターター・システム (Tartar System) と呼ばれるものの指揮管制を掌るメインのシステムのことです。


(注) : ターター・ミサイル・システム と言った場合は、ミサイル、発射機 Mk-13、射撃指揮装置 Mk-74 及びそのコンピューターである Mk-152 を中心にその関連・付属機器などを合わせたもののことで、ターター・ウェポン・システム と言うと、これに WDS 、三次元レーダーなどを組み合わせたものの総称になります。


( ターター・ミサイル・システムの構成図 )

( ターター・ウェポン・システムの構成略図 )

(注) : ターター ( 及びタロス、テリアの “3T” ) ミサイル・システムの詳細についてはまた別にご紹介する機会もあろうかと思いますので、ここでは省略いたします。


さてその WESWeapon Entry System の略で、開発を行った米国 RCA 社によって名付けられたものですが、これ、その名のとおり、正確に言えば現在の艦艇戦闘指揮システム (CDS、Combat Direction System) やそれ以前では米海軍で NTDS (Naval Tactical Data System) と呼ばれたような、いわゆる 艦艇戦闘情報処理システム ではなく、ターター・システムの WDS (Weapon Direction System) と言われるものと同じ 武器管制装置の一種 なのです。

では何故この武器管制装置である WES を搭載した 「たちかぜ」 型を海上自衛隊はわざわざ システム艦 と呼んだのでしょうか?

これにはちゃんとした訳があったのですが、実は海上自衛隊の者でさえその多くはこれの真意を正しく理解できず (理解せず)、そしてそのまま今日までズルズルと来ているのが実態と言えます。

今回 はそのことを少しお話ししたいと思います。


(注) : 海上自衛隊には “システム艦” という用語の定義そのものはありませんが、艦艇戦闘指揮システム (CDS、Combat Direction System) を搭載した艦艇を一般的にそのように呼んできております。

その CDS の定義ですが、例えば 『海上自衛隊電子計算機情報処理用語集』 では次のとおりとされています。


まあ、実に大ざっぱな定義ですので、これを広義に解釈すればデジタル・コンピューターを使用するシステムを搭載すれば何でもかんでも “システム艦” と言い得ることになります。

実際、海上自衛隊はそれで通してきたのですが。







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最終更新 : 01/Mar/2020