対空戦・TMD

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PAC-3では23区は守れません




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最後に、では日本のTMDはどうなんだ? 上手くいくのか? ということになります。 即ち、日本は米軍の事情とは全く異なり、純粋に “本土防衛” です。 どうすればその本土防衛という目的でTMDができるのでしょうか?

当然ながら、その為には可能な限り “日本全域をカバーできる” 態勢が必要です。 そしてこれはイージス艦による大気圏外対処 (Navy Theater Wide) と大気圏内対処 (Navy Area) の 2つによる “縦深防禦” によって可能となってきます。

( まあ、空自の PAC-3 は、それでも撃ち洩らした場合の、皇居や国会議事堂などの拠点を守るための最終用と考えればよいでしょうし、第一、それしか使い道がありません。 そんなものが “本土防衛” と呼べるかどうかは別として。)

では、この能力を上手く機能させるにはどうやったら良いのでしょうか?

現在防衛省・自衛隊が考えているTMD構想は簡単な図にすると ↓ のとおりであるとされています。


( 防衛省広報資料より )

しかし考えてみて下さい。 本当にこんなもので有効に機能すると思いますか?

(注) : 現在では統合幕僚監部が設置され、その下に航空総隊司令官を指揮官とするBMD統合任務部隊が置かれていますが、以下のことも含め基本的には変わっていません。)

空自の航空総隊司令官が指揮官? ことTMDに関して、“目” も “耳” も “手” も “足” も満足に持っていない人が? 航空総隊が府中から横田に移駐し、ここに日米共同の作戦センターが置かれましたが、そこで適確かつ迅速な対応が可能?

空自のバッジシステムなど、一体何時になったらイージスに並ぶ弾道弾の監視・探知・追尾能力を持つのか。 いま整備を進めているの国産のシステムなどでも、恐らく無理かと。 (その上に、そもそも空自はその能力も、組織も、体質も、思考方法も、“陸軍防空戦闘機隊” 以外の何ものでもありませんから。)

日本海にイージス艦を2〜3隻配備し、これらと AWACS を直接 (バッジ抜きで) リンクで繋げば、今及び近い将来でもバッジシステムより余程能力が高いのです。

空自戦闘機の要撃管制でさえ、恐らくイージス艦の方が能力が高いでしょう。 (未だに空自はイージス艦にこれを実施させるテストさえしていません。 要撃管制こそは空自だけの特権であり、空自総隊司令官の存在理由だ、という (へ) 理屈から。)

そのリンクを主体とする通信。 空自のバッジシステムは基本的にその中だけでクローズするように作られています。 したがって、これにイージス艦 (米艦も含めて) をリンクで繋ぐと、イージス艦が手足を縛られた格好になりその能力を封じられてしまいます。 十分に能力の発揮できない、極めておかしな通信システムしか持っていません。

米海軍艦艇 (とその上級司令部) と海自艦艇 (とその上級司令部) とはリンクで繋がっている方が十分にその能力を発揮できます。 それどころか、何れかの海自艦艇又は米海軍艦艇がバッジシステムとリンクを結ぶと、その艦艇は本来の艦艇間のリンク・ネットに入れない (=構成できない) のです。

しかも、この米海軍・海自のリンク内に入って来れるように空自のバッジシステムは出来ていません。 即ち、空自のバッジシステムは米海軍や海自のリンク・ネットと情報の共有をする機能・能力が無いのです。

( もしかして LINK-11 だけではなく LINK-16 もがあるではないか? と言う方もおられるかもしれません。 しかしこの LINK-16、高機能な反面、如何に使いづらい、制約・制限の多いシステムであるかご存じでしょうか?)

そして空自航空総隊司令官には何よりも “手” も “足” もありません。 PAC-3 しか無いのですから。

ハッキリ断言します。 日本を弾道ミサイルから守れるシステムを持っているのは、米海軍と海自であって、在日米空軍でも、そして勿論空自でも “ない” んです。

このよう状況で空自総隊司令官がTMDで日本防衛を指揮する? 冗談でしょう。

空自が日本本土防空と言う任務を持つから? 前路続航だから? 縄張り、プライド、既得権だから? そんな名目や肩書きなど何の役にも立ちません。 少々汚い言葉で言えば “屁の突っ張りにもならない” ですね。 実際の実力・能力が何も伴っていないのですから。

では誰がやれば良いのか?

これは実にハッキリしています。 目も耳も手も足も十分に備えている海自の 「自衛艦隊司令官」 です。 そして米海軍 (=米軍) の態度もハッキリしています。 例えばこうやって ↓ やるんです。




これらの全てがリアルタイムのリンクで繋がっています。 そして必要があれば、海自のイージス艦も普通の対空警戒から、瞬時にして米艦のような TMD 併用へ切り替えることも可能です。 縦深防禦態勢として。

( もう一度言いますが、空自のバッジシステムは物理的にこの中に入って来れないんです。 そういうシステムなんです。)

そしてこれの米側指揮官であり、実際にそのTMD兵力を持っている第7艦隊司令官と、通信が直接繋がっており、情報を共有でき、能力・兵力の相互補完ができる。 これは海自の自衛艦隊司令官しかいません。

こう言うと必ず質問する人がいます。 米軍が日本を守ってくれるという保証はあるのか? と。

あります。 在日米軍がいる限り、そして米大使館や企業が存在し、多数の米国市民がいる限り。

例え米国の領域外であろうとも、それらを守ることが米国の国家安全保障のトップに位置するからでり、その為には米国はその軍事力を行使することに何の躊躇もしないからです。

そして、それらを守るためのカバー・エリア内に日本全土が含まれる限り。 それが結果的に “間接的な防禦” であるとしても。


(この項終わり)


(注) : 本項で引用した画像は特記した以外は全て米軍の公式公開資料からです。


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《 追記 》 : ここにきて、俄に 「イージス・ショア」 の導入の動きが出てきました。 遅いって! 私に言わせれば “何を今頃になって” です。 これについては項を改めてお話しすることにします。







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最終更新 : 15/May/2017