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マルタ・ロケ



折角ですからここでNHK 『坂の上の雲』 の制作に関連して、平成21年5月から6月にかけての約1ヶ月間にわたって行われたマルタでのロケについてお話ししておきたいと思います。


( 撮影所から見たグランド・ハーバー湾口、背景はバレッタやスリーマなどの市街 )

マルタでのロケは 「Mediterranean Film Studios」 という撮影所で行われました。 「マルタ騎士団」 で有名な地中海マルタ島の中心のグランド・ハーバーからすぐ近く、海岸に面した丘の上にあります。


( 元画像 : Google Earth より  赤丸が撮影所の場所 )

( 元画像 : Google Earth より  撮影所全景 )

    

( 左がメイン・ゲート前から所内を、右が管理棟地区 )

( 今回のロケ用に作られた左奥がロシア艦セット、右奥が浅水槽の福井丸セット )

この撮影所は海洋ものの映画・ドラマの制作を専門とするところで、これまでに数々の素晴らしい作品が撮影されています。 日本で知られた代表の一つは、第二次大戦時のUボートをテーマにした 「U-571」 でしょうか。


( 撮影で使用された実物大セットが残っていました )

「Mediterranean Film Studios」 公式サイト :
          http://www.mediterraneanfilmstudios.com/

この撮影所の代表的な設備は 「Shallow Tank」 「Deep Tank」 と呼ばれる2つの大きな水槽です。 前者の浅水槽は、水を満タンにして山側から見ますと、水槽の縁がほとんど隠れて背景の広大な地中海と一体になっているかのようになることです。 そしてこの水槽は波起こし装置で様々な波を作ることができ、また水槽内に作られた撮影用セットを前後左右に傾ける装置など、様々なものが工夫されています。




後者の深水槽は、すり鉢上になった構造の深いもので、水中でのシーンを撮るためですが、水が抜かれたところを上から覗くとちょっと ・・・・ です (^_^;




NHK 『坂の上の雲』 のロケで使われた (作られた) のは、浅水槽に置かれた 「福井丸セット」 と、その脇の地上の回転テーブル上に置かれた 「ロシア艦セット」 の2つです。

前者の 「福井丸セット」 では、旅順口閉塞作戦の 「福井丸」 や 「報国丸」、日本海海戦時の 「信濃丸」 、そしてバルチック艦隊のマダガスカル寄港時、最後は開戦劈頭での 「ツザレウィッチ」 被害シーンなどが撮影されました。




後者の 「ロシア艦セット」 は艦橋部分と前部煙突だけのものですが、旋回させてセットのどの面からでも常に海がバックになるように撮ることができます。




既に前回出てきました開戦劈頭での 「ツザレウィッチ」 や、このあと出てくるバルチック艦隊旗艦 「スワロフ」 としての撮影に使われました。 このセット、日本海海戦における 「スワロフ」 の最期のシーンとして、撮影で完全に燃やしてしまいました。




どちらのセットとも十分、いや十二分にもとは取ったかと (^_^;

このNHKのロケ時の2つのセットが写っている衛星写真がたまたまその後 Google Earth に出ておりましたので、次の記事でご紹介しております。


http://navgunschl.sblo.jp/article/48193285.html


このスタジオ、海洋もの専門だけあって、敷地内には過去の撮影で使われたセットや小道具類が沢山あちこちにそのまま置かれています。 撮影の合間合間の待ち時間にこれらを見て歩くのも結構楽しかったですね。


    


    


    


    


    


      

( あっ、右の写真に写っている人物は無視して下さい (^_^; )

撮影所の敷地に隣接してリネーラ砦があり、その100トン砲が見えます。 逆に、撮影所は一般公開されていませんので、この砦の外壁に上ると撮影所内が丸見えと言うことになります。 観光地としての穴場の一つといえるかもしれません。


    


余談ですが、マルタ共和国は地中海の温暖な気候と風光明媚な小さな島国であり、しかもその歴史からしても観光が一番の産業なのですが、この映画産業にも力を入れています。

このため、一般の仕事での労働時間は1日8時間を超えてはならないと法律で定められていますが、観光と映画の2つについては12時間までの労働が許可されています。 これだけでもマルタの人にとっては特別なことなのです。

なにしろ、いまだに “シエスタ” (午睡) の風習が根強く残る土地柄であり、文科省や観光省のお役人は朝7時から昼の12時までが勤務時間で、あとは自由というところです。

ところが、NHKのロケはとてもではありませんが1日12時間では足りず、時には昼から一晩中明け方まで、そして翌日はまた昼から、という私たち日本人からしても相当なハードスケジュールの日が結構ありました。

このため現地スタッフさん達には、法定を超える長時間の仕事をしてくれる人を “ボランティア” という名目で募ったのですが ・・・・ 全員が手を挙げて “OK! 無問題!”

もっともあとで聞いたところでは、日本のロケ・スケジュールは “クレージーだ” と言って笑っていましたが (^_^;

面白いことに、朝だろうと昼だろうと夕方だろうと、その日の撮影の最初は “まずお腹を一杯にして” と言うことで、スタッフと出演者の全員が揃っての食事から始まります。 日本には無い習慣ですが、これはこれで皆が和気あいあいとなって仕事が始められる、良い方法と思います。




    


    

( ある日の料理からいくつか )

この撮影所出入りのケータリング業者さんと思いますが、毎日、というより毎食異なるメニューでしかも大変おいしい料理でした。 そしてこの業者さん、お手伝いのかわいいお嬢さん二人が食事の時以外にも昼間だろうが夜中だろうが撮影の合間合間に飲み物や食べ物を現場のスタッフや出演者さん達に配って歩いてくれました。

これはありがたかったです。 これらは別にNHKさんの特注だったからというわけではなく、この撮影所での普通のやり方のようです。


( 夕暮れの撮影所 )

なお、このロケの期間中、セットの模様替えなどの時には私はフリーでしたので、その時を利用してのマルタ散策記などについては、私のブログの次のカテゴリーで連載しております。 こちらも一緒にお楽しみいただけると嬉しいです(^_^)


「マルタあれこれ」 (全25回) :
          http://navgunschl.sblo.jp/category/768402-1.html







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 最終更新 : 02/Jul/2017