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『第2次大戦中の対潜戦闘』




ここで公開しますのは、1946年に米海軍のOEG (Operations Evaluation Group) (注) がその成果報告書として出した一連のものの内の一つ、『 OEG Report No.51 Antisubmarine Warfare in World War II 』 と、これを海上自衛隊が昭和30年 (1955年) に邦訳し部内参考資料の 『第2次大戦中の対潜戦闘』 として配布したものの2つです。

原本は研究者の間では古くから知られていたものの、当初は 「Confidential」 に指定された秘密文書であったこともあり、言わば第2次大戦における連合軍の対潜戦に関する幻の史料の一つと言えるものでした。

その後秘密指定は解除され、出版社からそのまま復刻されたことがありますが、それでもネットが普及するまではなかなか一般に知られることはありませんでした。

邦訳版も当然ながら部外に出る性質のものではありませんで、海上自衛隊の創設期においては部内で広く研究されたものと考えられますが、時代が進むに連れてそのまま忘れらてしまったものです。  

本史料は、お読みいただけばお判りのように、第2次大戦中におけるドイツ潜水艦の活動と、それに対する連合軍の対策の結果をOR手法を用いて冷静かつ客観的に分析したもので、第1部の対潜戦史概要と、第2部の各論分析結果の2つで構成されています。 優れた分析手法によって得られた結論が極めて簡潔に纏められており、これなくしては第2次大戦の対潜戦を語ることができないと言っても決して過言ではないでしょう。

ディジタル化に当たり、原本の方は写真や一部の図表の頁をグレー画像としましたので、ファイル・サイズが少々大きくなってしまいました。

また邦訳版は、私の手元にありますものは昭和50年代初めにある部署での参考用として必要となって昭和30年版をそのままコピーしたもので、元々があまり上質なものでなかったことに加えてその複製ですから、極めて質の悪いものとなっています。 したがってディジタル化に当たりかなりゴミ取りをしましたが、あまり綺麗なものとは言い難いことは予めご了承下さい。

この邦訳版、元の昭和30年版も含め、今では海自のどこにどれだけ残っているのか。 目先の勤務・任務に直接関係すること以外には興味も関心も示さない組織ですので、いま私のこのサイトで公開しておかないと、おそらく日の目を見ないままになってしまうと思っています。

なお、邦訳については、昭和30年ということと訳文の様子から考えると、かの筑土龍男氏によるものではないかと思われますが、確証はありません。

両史料を PDF形式にてそれぞれの全文を公開 いたしますが、ご存じのとおりのネット事情により残念ながら印刷及び加工については不可の設定としております。  もし研究者の方で印刷可能バージョンなどのご希望がございましたら掲示板又はメールなどでお聞かせ下されば考慮いたします。

勿論、公開いたしますファイルは、このままの形でしたら再配布などはご自由になされて結構です。




原本   邦訳版
 
(28Mバイト)   (13Mバイト)



(注) : OEG (Operations Evaluation Group) は、1942年にドイツ潜水艦の猛威に対抗するために民間の学者・研究者を集めて組織した ASWORG (Antisubmarine Warfare Operations Research Group) をその前身としています。

ASWORG は当初米艦隊司令長官 (Commander in Chief, US Fleet) 兼海軍作戦部長 (CNO、Chief Naval Operations) であったキング海軍大将直属の組織とされ、ドイツ潜水艦戦とそれに対する対潜戦闘の結果から、戦術及び兵器の有効性についてOR手法を用いた科学的な分析評価を行うことがその任務でした。

この ASWORG の活動成果は直ちに米海軍内で認められることとなり、対空戦を初めとする多くの分野で同様の部署が設けられ、海軍におけるORの重要性が認識されるようになりました。 

その結果、第2次大戦終結の翌年、1946年にこれらを統合したOEGとなり、時代時代の要請に応じてその姿形を変えながら現在に至っています。 また、これを支える民間組織であるCNA (Center for Naval Analysis) も所掌分野を広げながら存続しています。

このOEGの活動や変遷については大変に複雑でとても簡単には語れませんが、幸いにして次のすばらしい書籍が出されています。

「The Operations Evaluation Group; A History of Naval Operations Analysis」
(US Naval Institute Press, 1984, ISBN-10:0870212737)

当該書は単に ASWORG から現在に至るOEGの歴史に留まらず、米海軍におけるORの発展経緯について詳述されており、この方面に興味のある方に是非ご一読をお薦めする一冊です。 ただし少々高価ですが (^_^;

なお、本史料を読んでつくづく思うことは、物量や兵器、戦術などはもちろんですが、このOEGという組織一つをとっても、日本はとても米英 (英海軍にも似たような組織がありました) との戦争に勝てなかった、ということです。 そして戦争というものは、決して軍・軍人のみが実施するものではなく、民間をも含めた全ての国力に加え、あらゆる “知恵” を結集して行われるものである、ということです。

そしてそれ以上に、本史料中には旧海軍の潜水艦に対する対潜戦については全くと言ってよいほど出てこないことにも注意する必要があるでしょう。

何れにしましても、まずはこの第1級とも言える素晴らしい史料をお楽しみいただきたいと思います。







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 最終更新 : 13/Jul/2013