対空戦・TMD

HPトップ頁へ  


低速標的機 KD2R-5型改



  概 要 
  海自の運用体制
  主要性能要目
  各部の構成
  運用システムの構成
  運用法の概要

 

 概 要


本標的機は、対空射撃訓練の標的として使用され、「JATO」 (Jet-fuel Assisted Take Off) と呼ばれるロケット・ブースターによって発射台から零距離発射され、陸上基地、艦艇、あるいは航空機からの無線によって遠隔操縦されるものです。

高翼単葉で、4気筒2サイクル空冷エンジンを動力とし、ロールとピッチ軸の遠隔操縦系統については自動安定機能を有しています。

海上自衛隊においては、艦艇の対空射撃の標的として、まず昭和32年に米海軍から KD2R -2型が10機供与され、続いて翌33年には米国ラジオ・プレーン社から KD2R-5型を10機を購入したのを皮切りに、34年に7機、35年に6機を購入しました。

そして、昭和37年からは日本電気株式会社(NEC)が米国ノースロップ社との技術提携により国産したものを導入しています。


( ノースロップ社公式写真より )

 

 海自の運用体制


当初は、昭和32年に警備艇「はまぎく」(LSSL-87)が本機を6機搭載して運用する母艇として改造の上艦艇の射撃支援に当たり、昭和35年にはこのための特務艇に種別変更されましたが、船体が小さいことから、狭い後甲板での運用には制約が大きく、かつ野島崎南東方の射撃訓練海面であるC海面に進出しての支援には不向きであることから、昭和39年には護衛艦「くす」(PF-281)が改造されてこれと代わりました。


( 『海気集』 より 「はまぎく」艦上の KD2R-5 )

その後、「くす」の老朽化と高速標的機の導入により訓練支援艦「あづま」(ATS-4501)が建造され就役したことにより、「くす」も昭和45年にその役目を終えて支援船に種別変更となりました。

また、昭和45年以降は、「あづま」(最大搭載機数10機)の他、特務艇「83号」(ASU-83、館空基)、そして第11海上訓練指導隊(11FTG、現標的整備隊の前身)の移動管制班の支援により DASH 運用設備を利用した護衛艦「たかつき」型4隻に搭載して運用しています。

(注): 「あづま」を含む運用艦艇については昭和58年の 11FTG の資料によります。

標的機の整備は 11FTG で行い、一時は保有機数27機、運用可能機数25機を数える時もありましたが、平成15年までに全機とも退役しました。

なお、訓練支援艦「あづま」及び「くろべ」共に第2標的機格納庫に低速標的機最大10機を搭載可能ですが、高速標的機の支援・運用増により両艦とも平成4年以降は低速標的機の搭載・運用はしなくなったとされています。

 

 主要性能要目


項  目 性 能 諸 元
 最高速度  195 kt (一定)
 失速速度   64 kt 以下
 上昇速度  900 m/分
 上昇時間  9,000 ft まで 4.3分
 上昇限度  18,000 ft
 運用高度  最低 :   200 ft
 最高 : 7,000 ft
 航続時間  53 分
 推進装置  型式 : 4気筒水平対向型空冷2サイクルエンジン
 出力 : 95 HP
 最小回転数 : 3,100 RPM
 燃料 : 航空用ガソリン・潤滑油混合
 ブースター装置  型式 : ロケット・モーター 1型
 推力 : 1700 kg
 全備重量  162 kg
 機体寸法  全長 : 3.82 m
 翼幅 : 4.02 m
 全高 : 0.79 m
 用 途  艦艇の40mm機銃、3インチ、5インチ、76mm砲の射撃
 追尾訓練




( KD2R-5型改の飛行性能概要 )

 

 各部の構成



(注) アッシ : アッセンブリ(Assembly)


 (1) 主 翼


全金属製で2枚のパネルで構成されます。

2本の前方固定用ピンと1本の取付ボルトで胴体に固定され、補助翼用ジャイロ及びサーボモーターは主翼下部のブラケットに取り付けられています。

主翼の両端にはレーダー・レフレクター(5インチのルナバーグ・レンズ)用ポット・アッセンブリー、又は発煙筒を取り付けることが可能です。

また海面着水時に海中に沈むことが無いように、主翼内にはポリエチレン製の浮き子(ブロック)が格納されています。


 (2) 胴 体


前 部 : エンジンは胴体前部に3本の組込ボルトで固定され、その後方にバッテリー、燃料フィルターなどが装備されます。

燃料タンク部 : 燃料タンクには溶接一体構造で、機軸方向に機内配線用ケーブルを通すパイプが貫通しており、タンク上面には主翼を取り付けるピン穴の開いたブラケット2個とボルト取り付けようの穴が開いています。

胴体中央部 : 管制用無線受信機、ジャイロ、サーボモーター、接続箱などの搭載電子機器、及びパラシュート及びその開傘機構が収められています。

尾 部 : 胴体後部、昇降舵からなり、昇降舵はリンク機構を介して昇降舵サーボモーターに接続されており、棒状アンテナは垂直安定板に差し込まれています。 また、零距離発射用のブースター装置である JATO の取付装置及び回収用フックが取付られています。


 (3) エンジン


本標的機の水深動力は、モデル 0-100-3 の4気筒水平対向型空冷2サイクルエンジンで、重量は約35kgです。

 

 運用システムの構成


 (1) 標的機
 (2) 発射装置
 (3) 艦上管制装置
 (4) 各種点検整備用機材

 

 運用法の概要


 (1) 運用の流れ


点検 → 発射 → 飛行 → 回収 → 整備及び修理 の流れで運用されます。


 (2) 発 射


艦上発射では、各種の点検を行った後、約12〜15度の発射角度に設定された発射機から JATO を取り付けて発射される。 JATO は約0.7秒間燃焼し、0.8秒後に自動的に離脱・落下するようになっている。


 (3) 飛 行


飛行中のコントロールは、艦上管制装置と標的機内の機上搭載電子機器によって行われます。 艦上管制装置では、標的機を追尾しながら、7種の指令を標的機に送ることができます。 艦上からの、上昇、下降、旋回、等の各種指令は標的機内の電子機器を通じして各コントロール機器に送られて自動的に処置されます。

元々低速標的機の飛行は視界内のみに限定されていましたが、その後「あづま」及び「たかつき」型護衛艦での飛行は、レーダー・コントロールにより視界外飛行も可能となりました。


 (4) 回 収


飛行任務が終了すると、標的機はパラシュートで回収されます。 パラシュートの開傘は次のいずれかで行われます。

   艦上の操縦者からの指令
   無線操縦用搬送波の中断
   電源の切断
   無線操縦装置の不作動


 (5) 整備、修理、点検


回収後、標的機は洗浄、分解修理、エンジン試運転、システム試験、コンバインド試験の一連の作業が行われ、次の飛行に備えます。

なお、昭和60年頃の 11FTG における本標的機の整備能力は次のとおりとされていました。

  整備工数   : 約120 MH
  月間整備能力 : 12機 (最大16機)
  整備期間   : 1週間/機







HPトップ頁へ 対空戦・TMDメニューへ 対空射撃標的リストへ 現頁トップへ 次頁へ

最終更新 : 03/May/2020